CT検査を受けたいのですが、放射線の被ばくは大丈夫でしょうか?
CT検査ではX線を使用するため、放射線被ばくは避けられません。このことについては検査に不安を感じる方も多いかと思います。健康被害を誘発する放射線の量は100mSv以上と言われており、CT検査をはじめとする医療被ばくによる「発がんリスクの増加(確率的影響と言います)」は100mSv以下の被ばくでは実証されていません。CT検査で受ける被ばく線量は、撮影部位や撮影方法によって異なりますが、1回あたり20mSv以下です。
CT検査を年に複数回検査を受けられる方もおられますが、1回の検査で受けた放射線による細胞の傷害は、通常数日のうちに修復されますので、極端な短い期間内に繰り返し検査を受けない限り細胞の傷害が残って発がんする可能性も極めて低いと言えます。これら検査1回あたりの被ばく線量や検査回数を管理することは重要であり、発がんリスクをさらに低下させ、より安全な検査につながることは言うまでもありません。
なぜならばCT検査の被ばく量は検査の内容(たとえば手術前の精密検査なのか手術後数ヵ月後の確認検査か?治療の効果確認のため複数回の検査が必要なのかそれ以外の目的か?)、および患者さんの体格(体格が大きいほどX線は突き抜けにくいので放射線量を増やさなければならない)によって変わります。また、被ばく線量を減らすことは簡単なことですが、同時に画像の質が低下することにもつながります。むやみに放射線量を減らして、診断できないような質の悪い画像になってしまえば検査自体が無意味になり、まさに「無駄な被ばく」となってしまいます。
そこで、医療被ばくにおいて重要なのは「正当化」と「最適化」という考え方です。患者さんの生命にかかわるような重要な検査においては放射線によるリスクよりも放射線検査から得られる便益(ベネフィット)の方が上回るということで、検査が「正当化」されます。ただし、放射線被ばくを伴わない他の検査を考慮することも重要であり、CT検査を選択することが正しいかを常に考えなければなりません。また、検査内容や患者さんの体格に合わせて、正しく診断できる画質を担保した放射線量で検査を行うことが「最適化」です。「正当化」と「最適化」の実現には十分な知識を持った専門家が必要であり、放射線科医と診療放射線技師がその役割を担っています。
当院では高性能なCT検査装置を用いることで、画像の質を低下させることなく被曝線量を減らす工夫をしています。また、専門家で結成された「被ばく管理チーム」が設置され、放射線検査の「正当化」と「最適化」を検討しています。