造影剤を使わないメニエール病のMRI検査法 〜当院の最新研究成果について〜
当院では、メニエール病の病態である内リンパ水腫描出に関する新しいMRI検査方法を研究し、2025年の日本磁気共鳴医学会大会にて「大会長賞」をいただきました。
これは、造影剤を使わずにメニエール病の原因とされる「内リンパ水腫(ないりんぱすいしゅ)」をMRIで写し出す方法です。

メニエール病とは
メニエール病は、めまい・耳の聞こえにくさ・耳鳴りなどを繰り返す病気です。内耳という耳の奥の部分に「水ぶくれ」ができること(内リンパ水腫)が原因と考えられています。めまいの症状でお困りの方は、まず耳鼻科を受診することをお勧めします。
当院で行える検査方法
造影剤を使う検査(HYDROPS法)
静脈から造影剤を体に入れて、数時間後にMRIで内リンパ水腫を写す方法です。以前より行われている、確立した方法です。
造影剤を使わない新しい検査(非造影MRI法)
静脈注射はせず、通常のMRI検査だけで調べられる方法です。体への負担が少なく、造影剤を使えない方にも検査が可能です。
検査結果の精度について
今回の研究では、造影剤を使ったHYDROPS法と造影剤を使わない非造影法を比べました。
特に重症度が中等度以上に進んだ患者さんでは、両方の方法で80%以上の高い一致率が得られました。
つまり、造影剤を使わない方法でも、従来の方法に近い精度で「水ぶくれ」を確認できることが示されました。
第一選択はあくまで造影剤を用いた検査となりますが、造影剤が使用できない方に対してもこの非造影法は有益な検査になると考えられます。

どんな方に向いている検査か
造影剤を使う検査が向いている方
- 造影剤に対するリスクが著しく高くない方
- 初めてメニエール病の診断を受ける方
- より詳しい検査が必要な方
造影剤を使わない検査が向いている方
- 喘息の方
- 造影剤にアレルギーがある方
- 腎臓の機能に不安がある方
- すでにHYDROPS法にてメニエール病と確定され、経過を見ている方
※現在は、重症度分類で中等度以上の方が対象です。
今後の展望
現在は「中等度以上の患者さん」が対象ですが、早期で軽い症状の方にも検査できるよう研究を進めています。