大腸ポリープと運動(身体活動)の関係
一言でいうと
- よく動く人ほど「腺腫(せんしゅ)型ポリープ」ができにくい傾向があります。特に大きい/進行度の高いポリープは約3割少ないという総合解析があります。
- ただし「できたポリープの再発」については、運動で確実に減るという強い証拠はまだ不十分です。長時間座りっぱなしは男性で再発を増やすという報告があり、“動く+座りっぱなしを減らす”が現実的な対策です。
- 日本人でも、よく歩く・体を動かす人は大腸がんになりにくいことが示されています。ポリープ対策に加えて、将来のがん予防にも運動は意味があります。
なぜ運動が効くの?
運動は体脂肪やインスリン抵抗性、慢性炎症を改善し、腸の動きを促して便通を整えます。これらはポリープや大腸がんの芽を育てにくくすると考えられています。日本の疫学レビューでも、身体活動が結腸がんリスクを“ほぼ確実に”下げると結論づけられています。
エビデンス(かんたん解説)
- 新しくできる腺腫ポリープ:
20研究をまとめたメタ解析では、よく動く人は約16%少ない(相対リスク0.84)。大きい/進行度の高い腺腫では約30%少ないとの結果です。男女で傾向はほぼ同じでした。 - ポリープの再発:
3年ほどの追跡では「運動量と再発に明確な関連なし」とする研究があります。一方、座り時間が長い男性は再発が増えるという解析もあり、“座りっぱなしを減らす”ことの重要性が示唆されます。 - 鋸歯状(きょしじょう)ポリープ:
生活習慣の影響は受けますが、運動との関連ははっきりしないとするレビューがあります(喫煙・飲酒は明確に関連)。
どのくらい動けばいい?
米国がん協会の最新推奨:
- 週150〜300分の中強度(速歩など)または 週75〜150分の高強度(ジョギングなど)。
- 筋力トレーニングを週2日以上。
- 座りっぱなし時間をできるだけ減らす。
中強度=会話はできるが歌は難しい程度の息切れ。
例:早歩き、自転車ゆっくり、階段利用、家事でもOK。
今日からできる「動き方」7つ
- エレベーターの1〜2階分だけ階段に置き換え。
- 1時間に1回は立ち上がる(電話は立って対応、立ち上がりストレッチ30秒)。
- 昼休みに10分速歩を足す(朝+昼+夕で合計30分を目指す)。
- 通勤を一駅歩く/自転車にする。
- 週2回、スクワットや踵上げなど自重トレ。
- 休日はやや息が上がる散歩を30〜60分。
- テレビや動画は**“1本見たら1回立つ”**マイルール。
よくある質問
Q. 運動だけで内視鏡は不要?
A. いいえ。内視鏡検査(スクリーニング)による「見つけて取る」が最も確実です。運動はできにくくする・再発しにくくする可能性を高める補助策とお考えください。
Q. どの運動が一番効きますか?
A. 速歩などの持久的な活動で十分です。続けやすさが最優先。筋トレの併用で代謝や姿勢も改善します。推奨量は上記を目安に。
Q. 心臓病や整形外科の持病があります
A. まずは主治医にご相談ください。座りっぱなしを減らす・ゆっくり歩くなどの軽い活動から始めましょう。
当院からのひとこと
- ポリープ切除後の方は、検査間隔を守る+毎日少しでも動く+長く座らないがコツです。
- 喫煙・飲酒・肥満はポリープのタイプによっては強く関わるため、禁煙・節酒・体重管理もセットで取り組みましょう。
参考
- Wolin KY, et al. Br J Cancer 2011:身体活動が腺腫全体で16%、大きい/進行腺腫で**約30%**少ない。
- Molmenti CLS, et al. Cancer Causes Control 2014:座位時間が長い男性で再発リスク↑。
- 国立がん研究センター:身体活動は日本人の大腸がんリスクを“ほぼ確実に”下げる。
- American Cancer Society 2025:週150–300分の中強度活動+座り時間を減らす。